クラフトバンク総研

DXで型枠工事業をアップデート。杉内建設が目指す最先端

更新日:2026/3/23

杉内建設(東京都練馬区)の杉内健二社長は、創業者である父の急逝により、型枠工事業界に足を踏み入れた。当時は住宅業界に身を置いており、予期せぬ形での入職となった。家業を継承してから約20年の期間を「挑戦の連続だった」と述懐する。入社直後から杉内社長の心を動かしたのは、型枠工事が秘める「難しさ」という魅力。強大なコンクリートの側圧に耐え抜き、解体後の仕上がりまでを緻密に逆算する精緻な技法にのめり込み、現在は社員27人・売り上げ15億円を計上する企業へと成長を遂げている。

自社の強みを杉内社長は、「他社が敬遠する意匠性の高い物件に対応できること」と言い切る。「伝統と実績のある競合他社に対して、真正面から立ち向かっても勝ち目がないと悟った。当社の優位性を考え抜いた結果、『高難度物件ならば活路を見出せる』と結論付けた」と経緯を述べる。複雑な施工を敢えて引き受け、それを完遂するための技術を徹底的に磨き上げる。この戦略は、必然的に適正な単価維持と、取引先からの揺るぎない信頼に直結する。その施工を技術面で支えるのが、2024年から本格導入したデジタル技術である。同年にNC1号機、翌年にNC2号機を取り入れたことで、複雑な形状を精密に削り出すことにも成功。この卓越した技術をテクノロジーで再現可能にしたことが、業界内での特有の立ち位置に繋がったという。

杉内建設は、DXにもいち早く取り組み、自社でソフトウェアの開発にも着手。現場で働く職人の教育や図面管理や材料発注などを、デジタル上で実施できる環境を構築した。「紙の図面を探す手間や、アナログゆえの伝達ミスなどのストレスを減少させたかった」と動機を述べる。現場目線を追求して開発を続けたソフトは、社外への外販も視野に入れるほどの完成度に向上。今春には、工程管理や資料のクラウド化を実現する、新システムとしてリリースを予定するなど、専門工事業とITの融合を果たすための挑戦を続けている。

現在掲げる目標の1つに、杉内社長は「材料の軽量化」を挙げる。「身体の負担軽減に極限まで挑むことで、職人は年齢を重ねても長く働けるようになる。これは深刻な人手不足に貢献するだけでなく、ベテランの知見を有意義に活かすことにも繋がる」と確信する。この他、外国人実習生ともより円滑な意思疎通をするため、多言語対応のコミュニケーションツールの開発を目指すなど、テクノロジーを駆使する構想は尽きない。杉内社長の原動力は「ITの力で型枠工事業界をより働きやすく、魅力的な業界にアップデートすること」。落ち着いた口調の奥には、これ以上のないほどの力強い覚悟が滲み出ている。杉内社長は、この先も「匠の技と最先端の技術で型枠工事の未来をつくる」という思いを具現化するため、あらゆる困難に挑み続けていくはずである。

新着記事

  • 2026.10.09

    種苗を通した社会貢献を継続 サカタのタネ グリーンサービス

     サカタのタネ(神奈川県横浜市)は、今年7月に2027年5月期を初年度とする10年間の長期経営計画「PASSION2035」を策定した。基本方針は「Cultivating Tomorrow’s Harvest […]
    クラフトバンク総研編集長佐藤 和彦
  • 2026.10.06

    創業80周年を見据え、へいせいが進める人づくりとまちづくり

     株式会社へいせい(福岡県糸島市)は、2027年に創業80周年という大きな節目を迎える。社長を務める西原幹登氏は、「人と地域のお役に立ち、共に働く仲間が誇れる組織でありたい」との思いを語る。  これまで時代の変化に応じて […]
    クラフトバンク総研記者信夫 惇
  • 2026.10.02

    「地域の課題を、資産に変える」。中城建設が挑む新たなフェーズ

     「地域の課題を、資産に変える」。  中城建設(仙台市)を牽引する結城創社長の掲げる経営信条である。全国に先駆けて超高齢化と人口減少が進む東北は、日本の未来を凝縮した「課題先進地」とも呼ばれている。人口増加を前提とした、 […]
    クラフトバンク総研記者信夫 惇
  • 2026.09.29

    菅与組が5年間の変革に挑む

     今年6月、菅与組(秋田県潟上市)の代表取締役社長に畠山宗太郎氏が就任した。  創業105年の歴史を誇る同社が、120周年を迎える頃には「2040年問題」など社会構造の激変が予想されるが、畠山社長は「従来のやり方のままで […]
    クラフトバンク総研記者信夫 惇