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創業100周年を見据え、中林建設が組織転換

更新日:2026/5/8

中林建設(静岡県三島市)では、トップダウンからボトムアップ型への組織転換に取り組んでいる。佐野竜司社長は、「社員の声を吸い上げ、一人ひとりが自律的に動ける組織を目指したい」と思いを語る。自身は家業で現場監督として経験を踏んだ後、約20年前に同社に参画。送電線鉄塔建設から土木工事など、多岐に渡る現場で知見を蓄積後、2023年に代表取締役に就任した。現在は、創業75年を迎えた伝統を重んじながら、次世代に即した体制の変革を牽引する。

同社の強みは、公共土木・電力・基礎工事の3事業を柱とした多角的な事業構造にある。この中でも「送電線や変電所等の電力インフラ分野は、リニアやデータセンター需要を背景に今後10年は成長局面にある」と分析。2025年度の売上高が55億円を記録した要因を、「部門の垣根を越えた人員配置や技術交流に活かし、繁閑の差を解消できたことで、稼働率と収益性を高められた結果。数字は後からついくるものと考えている」と冷静なスタンスを見せる。市場環境に即した戦略的な経営が、着実な業績拡大に結実し始めている特徴がある。

持続的な成長に向け、佐野社長は「人材定着への取り組みが必要不可欠」と断言する。近年では、電力事業部における長期出張時の集団生活を廃止。アパートや完全個室寮を標準化し、若手社員が重視するプライバシーや個の価値観に寄り添う決断を実行した。「多様性が前提となる時代。個性を重視する組織づくりの加速化により、会社の可能性を拡張したかった」と動機を述べる。技術基盤を支える37人のベトナム人技能実習生や高度人材に対しても、共に未来を創るパートナーとして向き合う。フットサル大会や慰労会を定期的に開催するなど、言葉の壁を越えた融和を図ることで、チームワークの更なる強化を手掛けている。


佐野社長は、中林建設の社長を務めた人物の中で唯一、創業者・七澤三郎と直接の接点を持った経験がない。しかし、胸の中には、常に経営理念である「七澤九遺訓」が深く刻まれている。七澤氏が説いた9つの精神。「会社も従業員も社会から尊敬を受け、信頼される存在であり続けたい」。落ち着いた口調の奥には、力強い覚悟が滲み出ている。自身は、2年ごとの任期制という厳格な緊張感の中に身を置き、「会社のためなら、いつでも次の世代にバトンを渡す」と地位に対しての執着を一切見せない。新たな企業テーマに「未来へ繋ぐ確かな技術」を掲げた中林建設。創業100周年に向けた歩みは既に始まっている。

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