クラフトバンク総研

創業100年を通過点に、佐藤建設が柔軟な経営に取り組む

更新日:2026/6/5

 社内DXを軸に佐藤建設(静岡県沼津市)の組織変革が、驚異的なスピードで進んでいる。着手からわずか1年弱で、社内にあった書類の9割以上を電子化に成功。佐藤宗徳社長は、IT投資を利益に直結するための「攻めの戦略」と位置づけている。「事務効率や意思決定のスピードで、大手に負けていては生き残れない」という危機感を基に導入したのが、クラウドによる決裁システムだ。以前は承認するには現場から事務所に戻る必要があったが、現在はスマートフォン1つでどこからでも完結できる。「この停滞のないスピード感が、組織全体の活性化に繋がっている」と確かな手応えを語る。

 佐藤社長の根幹にあるのは、「社員を信頼し、現場や業務の細部は徹底して任せる」という揺るぎないスタンスだ。社長自らが細かな指示に奔走するのではなく、大きな課題設定や組織の進むべき方向性を示すことに徹する。この「任せる勇気」が、社員一人ひとりの主体性を呼び覚ました。大胆な権限委譲により、現場での判断スピードが向上しただけでなく、社内では部署の垣根を越えたコミュニケーションが自然発生したという。真に強いのは「社員が自らの頭で考え、心身ともに健やかに動く組織こそが真に強い」という信念。会社全体に追い風を生み出すことに成功した。

最優先課題として掲げるのは、「言うまでもなく採用」。同社では、従来までの理系・工学部中心という枠組みにとらわれず、文系出身者や女性の採用を積極的に推進する。「未経験でも自社で1から育てられる」教育体制を構築し、門戸を広く開放している。独自の福利厚生も手厚く、沼津市と連携した「奨学金返還支援制度」を導入。若手社員が経済的な不安なく仕事に打ち込める環境を整えた。今年は、新たに「健康経営優良法人」の認定を取得したことも、改善・改良に繋げられた。佐藤社長は「若い世代は、企業の社会貢献性や働きやすさの基準を非常によく見ている。健康経営への取り組みは、採用における重要な信頼の証になる」と分析し、自社の組織運営に織り込んでいる。

 

「創業100年まであと16年。利益を追うだけでなく、地域に雇用を生み続け、社員・家族から『佐藤建設に入社して良かった』と再認識される会社であり続けたい」。このシンプルな願いこそが、佐藤社長を突き動かす最大の原動力だ。伝統という背骨に、DXのスピードと健康経営の配慮を注ぎ込む経営手腕。佐藤社長は老舗看板の重みを、次なる100年に紡ぐ推進力に変換してみせた。「選ばれる会社」というゴールなき理想を掲げ、向かう先には何が待ち受けているのか。100年企業という通過点に向け、佐藤建設の挑戦は始まっている。

Instagram:https://www.instagram.com/sato_ken310/

新着記事

  • 2026.11.02

    本州最北の地からの挑戦を継続 熊谷建設工業

     「この街を次の世代に残さなければならない」  熊谷建設工業(青森県むつ市)を率いる熊谷圭之輔社長の切実な危機感である。会社は本州最北の下北地域で、80年以上も地域のインフラを支え続けてきた。道路整備や冬の除雪を担う建設 […]
    クラフトバンク総研記者信夫 惇
  • 2026.10.30

    事業承継に向けた準備に入る セカンドライフ

     セカンドライフ(さいたま市岩槻区)の子安克枝氏社長は、企業永続を見据えた事業承継を進めていく方針を固めた。次期社長に指名した人物は荒田晃次工事部長。2002年に会社を設立する以前から、長く二人三脚で動いてきた信頼関係を […]
    クラフトバンク総研編集長佐藤 和彦
  • 2026.10.27

    100年続く技術・可能性の伝承を目指す 竹田工務店

     35歳で先代から会社を承継した当時を、竹田工務店(京都市南区)の竹田俊介社長は「建設業界の高齢化が進む中、同世代の仲間が壊滅的に少なく、将来に言いようのない不安を抱いた」と振り返る。 京都の地で100年以上に渡り伝統建 […]
    クラフトバンク総研記者信夫 惇
  • 2026.10.23

    シンコーワが人材重視の組織づくりを始める

     「家業に戻るという選択肢は特になかった」   シンコーワ(名古屋市中村区)の古市治希社長が、学生時代から抱いていた本音である。創業者であり現会長の父・光明氏から、家業の話は殆ど聞いたことがない。その後、新卒では別の会社 […]
    クラフトバンク総研記者松本 雄一