クラフトバンク総研

DX駆使の矢野興業が、県内の生産性向上をサポート

更新日:2026/8/6

「それならば、全てを君に任せるから、責任を持って取り掛かってほしい」。

 矢野興業(宮崎市)の辻清常務が、「今のやり方のままでは、必ず会社は潰れるので辞めます」と上層部に手紙を送った直後、現・会長の矢野文昭氏から電話で命じられた内容である。当時は、現場・予算・原価に関する管理が不完全で、工事終了後に赤字だったと知るケースが続出していた。1人の責任者のみが全体を把握し、事業を動かし続ける異常性。「この人が居なくなると、あらゆる物事が行き詰まる」という思いは日に日に膨れ上がり、退職を前提に行動を起こしたが、想定外のリアクションに「何を言われたか即座には理解できなかった」と微笑みながら振り返る。間もなく就いた役職が「土木次長と営業部長」。それ以降は、「現場の人間がお金を動かさなければ、儲けは生み出さない」という理念を体現し、社内には「提案する人こそが優秀な社員」という風土を作り上げることができた。

 今年は国土交通省から「測量業者登録」の認定を受けた。これまで培ってきた3Dスキャナーを含めたドローン測量などのDX技術を、他社に提供することが可能になった。測量に掛かる時間を圧倒的に短縮できる技能は魅力的で、「まだ県内にはDXを内製化できていない企業が多いので、これまで蓄積したノウハウを惜しみなく提供することで、現場で掛かる負荷を少しでも軽減したい」と思いを述べる。5年前には、社内にドローンの国家資格を輩出できるスクールも創設した。「DX推進は必須事項だが、そこに携わるのは言うまでもなく『人』。業界全体が高齢化する現実とも向き合い、各年代の人材を育成することで、技術継承を果たしたい」という強い信念を基に、今できる最善のことに全力を注ぐ。現在、2代目の社長を務める矢野智久氏がトップに就いて以降、会社は新たな挑戦に取り組む体制が出来上がり、様々な着想を基にした事業展開を続けている。

 昨年は、ボディービルダーを応援する目的で、それを目指す若者をターゲットに絞った「マッスル採用」を設置した。直後に20代の若手からの応募があり、既に社内で活躍を見せ始めるなど、従来にないアイデアでの可能性も拡張する。常に辻常務は「最低限の売り上げを確保するため、人口減少が続く中でも人材確保ができる方法を考えている」と基本スタンスを述べる。子育て・介護世代の双方に対しては、急遽現地に向かう必要性が出た場合は、欠勤扱いにしない独自のサポート制度を導入したことも、入社の呼び水になっているという。最も強く願うのは、「『矢野興業』という名前が、今以上に世間に知れ渡ること」。グループ企業としては全12社が存在感を発揮しており、建設業界だけに留まらない動きを見せている。直近で心掛けるのは「DXを駆使することで、着実に生産性を上げ続ける仕組みを浸透させること」。活気ある若者が集結する会社として定着を果たした矢野興業。宮崎県内のDX加速化を実現していくためにも、今後の事業展開に大きな期待が寄せられている。

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